東京高等裁判所 昭和48年(ネ)2242号 判決
一 亡吉太郎が昭和三六年六月二一日に東京地方裁判所八王子支部において本件土地につき処分禁止の仮処分決定を得て、同月二二日にその旨の登記を経由したことは、当事者間に争がない。
二 ≪証拠≫によれば、右登記の登記原因である前記仮処分決定は、昭和四九年三月一四日に東京地方裁判所八王子支部昭和四四年(モ)第七八一号仮処分異議事件の判決をもって認可されたことが認められる。
三 ≪証拠≫によれば、右仮処分は、さきに認定した売買により亡吉太郎が本件土地の所有権を有効に取得したことを前提とし、右所有権に基く移転登記請求権の執行を保全する目的でなされた同人の申請を相当として発令され、吉太郎の相続人である被控訴人藤山みちほか五名と控訴人斎藤との間で認可されたものであることが認められるが、本訴において右売買を有効と認めることのできないことは既に判示したとおりである。しかしながら、仮処分異議事件における認可の判決は、その口頭弁論終結時を基準として被保全権利の存否及び保全の必要の有無が審理され、それがいずれも積極に認められた結果、原仮処分を相当とされる場合に発せられるものであって、被保全権利の同一性において変らざる限り、それを理由あらしめる事実が原仮処分の発令後に生じた事実であっても妨げられないと解するのを相当とすることに鑑みれば、本件の如く、前記売買の効力が認められず、所有権の取得原因として本案訴訟上認められた時効については仮処分異議事件において現実に主張され判断されてはいない場合でも、≪証拠≫から、右時効の完成時が異議事件の口頭弁論終結時以前に属し、従って時効を根拠とすることによって被保全権利の存否に関する異議事件の判決と同一の結論に到達し得べきものと認められる以上、右判決によって認可された仮処分の被保全権利は、本案判決においてもその存在を肯定されたものというを妨げない。取得原因の相異が同一基準時における同一目的物に対する所有権、従ってそれに基く移転登記請求権の権利の同一性を左右する理由とならないことは論を俟たないからである。してみれば、右認可にかかる仮処分の所期の効力、即ち、被保全権利(と言い得るためには、前述のとおり、認可の基準時たる異議事件の口頭弁論終結時をもって画されるが。)たる所有権に基く移転登記請求権の存在が本案訴訟において認められることを前提とし、その場合には右被保全権利の実現と牴触する仮処分債務者の処分行為(かく言い得るためには、処分行為前に、仮処分決定が発せられているだけでなく、被保全権利の存在することが認められることを要するが。)を無効とする効力を主張し得べき前提条件は充足されているものということができる。すなわち、既に認定した如く、昭和四一年六月一八日に亡吉太郎のた件土地の取得時効が完成したのであるから、被控訴人らは前記仮処分の効力を控訴人和田に対して主張し得ることめ本になる。(控訴人和田が本件土地を控訴人斎藤から買受けたのは、既に認定した如く昭和四四年三月三日である。)
(小林 横山 三井)